パソコンの性能表やカスタマイズに用いられている、実用される用語を解説しています。
CPUの用語
CPU
パソコンの頭脳。様々な計算や処理を行うパーツ。これの性能がパソコンの処理性能となる。
セントラル プロセッシング ユニット(中央処理装置)の略で、プロセッサーとも呼ばれる。
Core / コア
- Intel(インテル)社のCPUの製品名。2008年に登場して以降、個人向けパソコンの主流となっている。高性能なCore i7、バランス型のCore i5、低価格なCore i3が中心製品。上位モデルのCore i9もある。
- CPUの中にある処理装置。正確にはここがパソコンの頭脳。今はひとつのCPUの中にたくさんのコアがあって、同時に複数の処理を行えるようになっている。
Ryzen
AMD社のCPUの製品名。ライゼン。AMD社はずっとIntel社の2番手だったが、2017年にこのCPUが発売されて以降、急速に追上げている。高性能なRyzen 7、バランス型のRyzen 5、低価格なRyzen 3の他、上位モデルのRyzen 9やRyzen Threadripper(スレッドリッパー)がある。
Celeron / Pentium / Athlon
CoreやRyzenよりも下位に位置するCPU。性能は低いが安くて消費電力と発熱が少ない。Celeron(セレロン)はIntel社、Athlon(アスロン)はAMD社の製品。Pentium(ペンティアム)はCoreとCeleronの中間に位置する。なお、PentiumとAthlonは昔の主力CPUの名前を引き継いでいる。
Pコア / Eコア
近年のIntel社のCPUには2種類のコアが入っている。性能重視のPコア(パフォーマンス コア)と、性能は低めだが消費電力の低いEコア(エフィシエント、高効率コア)で、軽い作業はEコアに任せることで、より能率的に動けるようになっている。Eコアはサイズが小さく、コアを増やしやすい利点もある。
スレッド
CPUが同時に行える作業の数。コアが4つあれば4つの作業、つまり4スレッドの処理を同時に行える。ハイパースレッディングという機能(後述)で1つのコアで2つの作業を行える場合、4コアでも8スレッドとなる。
ハイパースレッディング
略してHT。1つのコアで2つの作業を行うIntel社の技術。2つ目の作業は余力で行うため速度が遅かったり、常にフルパワーになるため発熱や消費電力が増えたりしたが、技術の進歩で短所はかなり改善された。AMD社はSMT機能(同時複数処理機能)と呼んでいる。今のところ、Pコアには適用されているが、Eコアには適用されていない。
GHz(クロック数)
ギガヘルツ。クロック数の単位。クロック数とはCPUの速度の目安となる数値で、具体的にはCPUが1秒間に送っている電波信号の数。1GHzだと1秒間に10億の電波を送っている。すごい。多いほど高速だが、CPUの性能はクロック数だけでは測れない。なお1000MHz(メガヘルツ)で1GHz。
ターボブースト(TB / ブースト)
略してTB。作業が忙しいとき、コアの性能を一時的に引き上げるIntel社の技術。CPU(コア)は忙しくなると高熱を発するが、温度を監視して無理のない間だけ速度をアップする。これによりクロック数が変動するため、性能表には「2GHz~4GHz」のように基準速度と最大速度が併記される。AMD社の技術はプレシジョンブーストと呼ぶが、ほぼ同じ。合わせてブーストとも呼ぶ。
マルチコアのスコア
CPUのベンチマーク(性能測定)ソフトが、多くの作業を同時に行ったときの速度を点数で表わした数値。複数のコアをまとめて動かしたときの性能の目安にされる。マルチスレッドのスコアとも言う。パソコンの起動の速さや、創作作業(動画や写真の編集)などに特に影響する。
シングルコアのスコア
CPUのベンチマーク(性能測定)ソフトが、作業を1つずつ行ったときの速度を点数で表わした数値。コア1つあたりの性能の目安にされる。シングルスレッドのスコアとも言う。ゲームを含む一般のソフトウェアの動作速度はこちらの方が影響するが、処理の分散に対応しているソフト(Officeやフォトショップ等)はマルチとシングルの双方が影響する。
キャッシュ / キャッシュメモリ
CPUの中のデータ置き場。作業データはメモリというパーツに保持されるが、「CPUの中に置いてしまえばもっと速くなるじゃん!」という話になってキャッシュが作られた。コアごとに用意されたものと複数のコアで共有するものがあり、単に「16MB」とだけ書いてある場合は共有キャッシュの量を示すことが多い。置き場ごとに一次(L1)キャッシュや二次(L2)キャッシュと言う。共有キャッシュは三次(L3)キャッシュが多く、スマートキャッシュとも呼ばれる。
nm(プロセスルール)
ナノメートル。1nmは100万分の1ミリ。想像できないぐらい細かい世界だが、CPUの中はこの単位で作られている。製造プロセスとも言う。これが小さいほど装置が凝縮され、流れる電気の抵抗も減るため、性能が向上し、発熱と消費電力の軽減にも繋がる。しかし細かいほど作るのが難しくなって不良品が増えるため、現代のCPUの製造は歩留まり率(良品率)と微細化のせめぎ合いとなっている。ユーザーとしては細かいほど良く、性能や世代の目安となる。
Intel 7 / Intel 4
Intel社のCPUの設計の呼び名。Intel社は微細化よりも、電気を流す方法の改善を重視している。例えば電線を増やしたり、縦に並べたり、太くしたりなど。そしてプロセスルールが10nmでも普通の10nm以上の性能を発揮できるようになったので 10nm++ と呼び始めたが、微細化が進まない言い訳のように思われたため、7nmぐらいの性能はあるんだという意味で Intel 7 と言い始めた。やっぱり言い訳がましいけど、実際に性能は高い。
TDP
サーマル デザイン パワーの略で、直訳すると熱設計電力。消費電力と発熱の目安で、これが65Wだったら、フルパワーで65Wの電力を消費し、それに応じた熱も発しますよという意味。冷却能力や電源出力を決める目安となり、ノートパソコンならバッテリー持続時間にも関わる。省エネ的には低い方が良いが、同じCPUなら電力が多い方が速度は出る。
CPUクーラー / CPUファン
CPUに取り付ける冷却装置。CPUファンは風を送って冷やす扇風機で、回転が速くてサイズが大きいほど冷却力が上がるが、ブォーという騒音も増す。通常、CPUにヒートシンクと呼ばれる放熱板を付けて、それに風を当てて冷やす。
水冷クーラー
風ではなく液体でCPUを冷やすクーラー。冷却液を冷却するためのラジエーターと呼ばれる装置と、冷却液を循環させるパイプが必要になる。空冷よりよく冷えるが、冷却液が温まってしまうと空冷よりも温度が下がりにくい。ラジエーターの冷却にファンを回すため、やはり音はする。ビデオカードの水冷クーラーもある。
CPUグリス / サーマルグリス
CPUとCPUクーラーの間に塗るもの。これで小さなデコボコを埋めて密着させ、熱をよく伝えられるようにして冷却力を上げる。シリコングリスやダイヤモンドグリスなど色々な種類があり、高級品ほど熱伝導率が高い。最強は液体金属だがアルミ部品を腐食させる難点がある。
ファンレス
CPUファンやケースのファンがないこと。騒音がなくてとても静かで、吸排気を気にする必要もないが、冷却できないので発熱をすごーく抑える必要があり、性能は限られる。
オーバークロック
CPUの速度を何らかの方法でパワーアップさせること。発熱が増えるので冷却の強化が必要で、もし壊れても自己責任、良い子は手を出してはいけない。ただ、投入電力や速度倍率などを自由に変えられる「K」付きのCPUなど、悪い子向けの製品も普通に売られていたりする。
K付き
型番の最後に「K」が付くものは愛好家向けの上位製品。元々は速度倍率を高めてオーバークロックできる「倍率ロックフリー」と呼ばれるCPUで、設定を変えなければ単なる高性能品だったのだが、最近は標準設定でも温度が許す限り限界までブーストをかけ続けて爆走、高負荷時には燃え尽きるほどヒートし、冷却ファンは震えるほど爆速で回るようになった。そこにしびれたり憧れたりしない初心者は手を出さない方が無難。
SoC
システム オン チップ。近年のCPUにはグラフィック機能が内蔵されているが、さらにサウンド機能や通信制御など、他の多くの機能も一通り盛り込んだもの。主にスマホに使われているが、タブレットやノートパソコンでの採用例も増えている。
CPUの世代ごとの呼び名
Ice Lake
Intel社が2019年に発売したノートパソコン用の第10世代Coreシリーズの通称。10nmプロセス。ディープラーニング(AIによる動作の最適化機能)を持ち、省電力性能に優れた新設計のCPUだったが、基本性能は同世代のComet Lakeに劣った。グラフィック機能を内蔵する。ちなみに語源は、開発施設の近くの地名に由来。
Comet Lake
Intel社が2019年に発売したデスクトップパソコン用の第10世代Coreシリーズの通称。14nm++プロセス。++は普通の14nmより優れてますよというIntel社のアピール。旧来の設計だったが、それゆえに基本性能に優れた。ノートパソコン用も存在する。
Tiger Lake
2020年に発売されたノートパソコン用の第11世代Coreシリーズの通称でIce Lakeの後継。10nm+プロセス。TDPを一定範囲でパソコンメーカーが決められるcTDPという機能がある。Iris Xeと呼ばれる高性能なグラフィック機能を内蔵するものが登場。基本の性能も向上し、特にシングルコアの能力が大きく上がった。
Rocket Lake
2021年に登場したデスクトップパソコン用の第11世代Coreシリーズの通称で、Comet Lakeの後継のような立場だが、内部的にはIce Lakeの設計にTiger Lakeの技術を加えて作られている。14nm++プロセスで、シングルコアの性能向上に伴って能力がアップした。
Tiger Lake H45
2021年に登場したTiger Lakeの後期型。Tiger Lakeには標準型のUP3、省電力型のUP4、強化型のTiger Lake H35、後期強化型のTiger Lake H45の4種類があり、標準型よりTDPが高くパワーを出せるのに加え、コアの数も2倍で同時処理能力も勝る。実質、ノートPC用の11.5世代だが、内蔵グラフィック機能は弱め。
Alder Lake
2021年末に登場した第12世代Coreシリーズの通称。処理速度重視の高性能なコア「Pコア」と、速度より電力効率と低発熱を重視した高効率なコア「Eコア」による複合構成。軽い作業をEコアに任せることで能率的に動ける。プロセスルールはIntel 7(10nm++プロセス)。
Raptor Lake
2022年の秋に登場した第13世代Coreシリーズの通称。第12世代Coreの強化版で、第12世代と同じく高性能コア(Pコア)と高効率コア(Eコア)の複合構成。マルチコアの性能が大きく上がっている。ものにもよるが、マザーボードやメモリは第12世代Coreと同じものを使える。
Zen / Zen+
AMD社が発売しているRyzenの設計の名前。2017年登場のZen1と2018年登場のZen+がある。Ryzenは「第2世代なのにコレはZen1、アレはZen+」みたいに製品ごとに中身が違っていたりするうえに、型番で世代を判別しにくいため、世代ではなくこの設計名で分類されることが多い。ちなみに語源は「禅」。
Zen2
AMD社が発売しているRyzenの設計名のひとつで2020年から普及。7nmプロセス。初期のZenにあったトラブルの多くが解消され、Intel社のCPUが深刻な品薄に陥ったのもあって、シェアが急拡大した。Zen4登場後も、下位のRyzenにはZen2が採用されている。
Zen3
AMDが発売しているRyzenの設計名のひとつで2021年から普及。7nmプロセス。シングルコア性能でIntel社のCoreに追い付き、マルチコアは元々優秀だったため、同期(第11世代)のCoreシリーズとほぼ互角の性能となった。2022年以降の後期型はZen3+と呼ぶ。
Zen4
AMDが発売しているRyzenの設計名で2022年の秋に登場。5nmプロセス。全体的に性能が上がったが、デスクトップ用はライバルの第13世代Coreに苦戦しており、ノートパソコン用も価格の安いZen2とZen3+の方が採用例が多く、まだ影が薄い。