「ビデオカード」は綺麗な映像を表示するために使われるパーツです。
特に最新のゲームを遊ぶのに必要です。

「グラフィックカード」「グラフィックボード」「グラボ」とも呼ばれますが、すべて同じものです。
VGA(ビデオ グラフィック アクセラレーター、映像強化機能)と呼ぶこともあります。

ビデオカード、グラフィックボード、VGA

近年、グラフィック機能は CPU にも内蔵されており、無理にビデオカードがなくても画面を表示できるようになっています。
しかし CPU 内蔵のグラフィック機能はビデオカードより性能が劣り、ゲームによっては満足に動かせません。

ゲームと言っても色々ありますが、立体的な美しいコンピューターグラフィックス(3D描画)が表示されるゲームは、このパーツが必要になります。

トランプや将棋、平面(2D)イラストのみのゲームには、無理に必要ありません。

3D グラフィックのゲーム(COD)

美しい映像のゲームにビデオカードは必須

2D グラフィックのゲーム(艦これ)

イラスト中心のゲームでは要りません

一応、映画などの映像も、ビデオカードの機能を使えば高画質で滑らかに表示できます。
ただ、一般的な動画はビデオカードがなくても、CPU内蔵機能で十分に見ることができます。

画像加工やイラスト制作、映像編集も、あった方が処理が高速化しますが、必須というほどではありません。

CG作成、設計(3D CAD)、超高画質(4Kや8K)での動画視聴や編集、VR(バーチャルリアリティー。専用ゴーグルで見る仮想現実)といった高度な映像技術には必須となるので、クリエイター(創作作業)には必要とされます。

しかし、ゲームをやらない、設計や映像編集はしない、VRとかも見ない人は、ビデオカードは必要ありません。

そしてビデオカードは価格が高く、サイズも大きく、消費電力や発熱も高いため、不必要なら無い方が良いです。
よって一般向けのパソコンには、これが備わっていることはまずありません。
大きさや冷却能力が限られているノートパソコンは、特にそうです。

デスクトップパソコンの内部

デスクトップなら大きなビデオカードも搭載しやすい

ノートパソコンの内部

中身が狭くバッテリー駆動のノートはビデオカードを搭載しにくい

しかし冒頭で述べたように、最新のゲームを快適にやりたいなら絶対に必要です。
そのためそのことを知らず、ゲームを目的の一つとしてパソコンを買ったのに、ビデオカードがないものを選んでしまい、後悔する人が後を絶ちません。

ゲーミングモデルならビデオカードは必ず備わっていますので、パソコンのゲームをやりたい人は「ゲーミングモデル」から選ぶようにしましょう。

ただし「ゲーミングモデル」と、「ゲームもできるとアピールしているパソコン」は違います。

大手家電メーカー製のパソコンには、高性能な CPU を使っていて「ゲームもできます」とアピールしている製品があります。
しかしビデオカードがない場合、遊べるゲームは限られています。
遊べるとしても高画質での動作は期待できません。

ゲーミングモデルではないパソコン、ゲームを得意としないメーカーのパソコンの「ゲームもできる」という表記は、鵜呑みにしないで下さい。
(ゲーミングモデルを得意とするメーカーは「まずメーカーを選ぼう」で説明しています)

設計をしている人も注意です。
家で 3D CAD などの設計用ソフトを使うためにパソコンを買ったけど、ソフトが全然動かない、ゲームに興味が無かったからゲーミングモデルなんて見ていない、ビデオカードのことも知らなかった、という人が結構います。

最近はこうした人のために「クリエイターモデル」というものが用意されているので、そちらをチェックしてみましょう。

ゲーミングノート

ゲーミングモデルならノートPCでもビデオカードを搭載

クリエイターパソコン

CAD や CG 作成用のクリエイターモデルもビデオカードを備えます

ビデオカードにはいくつか種類があります。
大きく分けて、NVIDIA 社の「GeForce」と、AMD / ATI 社の「RADEON」があるのですが、GeForce が主流です。

GeForce にも様々な種類があり、以下はその一部です。

GeForce RTX 4080 : 新世代の最上位型
GeForce RTX 3070 : ひとつ前、3000 世代の高性能型
GeForce GTX 1660 : 以前のバランス型、現在は下位型
GeForce GT 730 : 700 世代の安いタイプ

数字の3桁目と4桁目が世代(シリーズ)を表しています。
GeForce RTX 4070 なら 4000 シリーズ、GeForce RTX 3050 なら 3000 シリーズです。

ちなみに、世代ごとの発売時期は以下のようになっています。

GeForce 4000 世代:2022年に発売開始。
GeForce 3000 世代:2020年に発売開始。長く主流を務めた。
GeForce 2000 世代:2018~2019年にかけて発売。
GeForce 1000 世代:2016年から発売開始。下位モデルの現行型。
GeForce 900 世代:2014~2015年に発売。
GeForce 700 世代:2013~2014年に発売。

2桁目の数字は「高性能型か、中間型か、安いタイプか」を表わしています。
GeForce RTX 4090 や 4080 は高級品、さらに上位型の 4070、標準型の 4060 と続き、GeForce GTX 1650安価型。
GeForce GT 1030 は補助的な(最低限の性能の)製品です。

もし末尾に「Ti」や「SUPER」という文字が付いている場合、ちょっと上位のタイプであることを表します。
GeForce RTX 3060 Ti だと、3060 より上で、3070 より下になります。
SUPER は Ti よりも下位です。

しかし、高性能なビデオカードほど値段が高いです。
それでなくてもビデオカードは高価格で、上位のビデオカードは15万円など、そのパーツだけで安いパソコンが買えるレベルになります。

GeForce RTX 4060 などの「60」のビデオカードは価格と性能のバランスが良く、5万円前後の場合が多いので、このあたりを利用する人が多いです。

GeForce RTX 3050 や GeForce GTX 1650 などの「50」のビデオカードも、高性能とは言えませんが、ゲームを普通に遊べる性能は備えており、価格が3~4万円と安いので人気があります。

GeForce RTX 4070 などの「70」クラスになると、ビデオカードだけで10万円はする高額モデルとなるので、予算に余裕がないと厳しくなります。

しかし、ビデオカードの性能はゲーム(および3D描画のあるソフトウェア)の動作速度に直結します。
ゲームを高画質で快適にやりたい人は、予算と相談しながら、できるだけ上位のものを選びたいところです。

Geforce GTX
※ビデオカードの外観。高性能なものには設置スペース、高出力電源、冷却能力、そして予算が必要。

最近はカスタマイズ(BTO)可能なパソコンでも、ビデオカードを選べないことが多いです。

カスタマイズで購入する場合は「パソコンを選んでからビデオカードを選択する」のではなく、「欲しいビデオカードが搭載されているパソコンを選んでから、他をカスタマイズする」という形になります。


AMD 社の CPU(Ryzen など)を使っているパソコンには、ビデオカードに GeForce ではなく「Radeon」が使われていることも多いです。
Radeon は AMD 社が販売しているビデオカードで、同じ会社のパーツを組み合わせた方が相性が良くなります。(誤動作が少ない)

以前は GeForce はゲーム向け、Radeon は映像向けと言われていました。
しかし一般の映像にビデオカードが必須ではなくなったため、最新ゲームへの対応力に勝る GeForce が優勢になっています。
好調によって技術革新も進み、今は GeForce がパソコン用グラフィックにおいて主流です。

特に日本では、多くのゲームやソフトウェア、周辺機器が GeForce に最適化されています。

Radeon が大きく劣る訳ではないのですが、周辺機器やソフトに軽微な不具合(例えば、一部のゲームで映像が乱れるとか、マイナーなモニターだと反応してくれないとか)が起こることがたまにあるため、自力で対処できる中級者以上の人にしかお勧めできません。


注意として、グラフィック機能の表記が「インテル HD グラフィックス」になっている場合があります。
これは CPU に内蔵されているグラフィック機能のことで、ビデオカードではありません。

「インテル HD グラフィックス」や「インテル UHD グラフィックス」は、ビデオカードの名前ではありません。
「Intel Iris Xe Graphics」も同様です。

普通は「CPUに内蔵」という表記がありますが、たまに書かれていないパソコンもあるので注意して下さい。
もちろん性能は、ビデオカードに大きく劣ります。

最近は CPU 内蔵グラフィック機能の性能も上がっていて、Iris Xe なら画質を下げれば相応にゲームを動かせたりしますが、まだまだビデオカードには及びません。
専用のメモリを持っていないため、メモリ不足になって動作遅延が発生することもあります。

AMD 社の CPU(Ryzen など)の場合、内蔵グラフィック機能の名前がビデオカードと同じ「Radeon」になっていて、特に紛らわしいので注意して下さい。


ビデオカードの中にもCPU(計算装置)やメモリ(データ置き場)が入っていて、グラフィック専用CPUは「GPU」、グラフィックデータ専用メモリはビデオメモリ(VRAM)と呼ばれます。

ビデオカード図解
※ビデオカードの中にもパソコンのように、冷却ファンがあって、ヒートシンク(放熱板)があって、GPUがあって、メモリがあります。

これらのグラフィック機能とビデオカードの用語は こちらのページ で解説しています。
ビデオカードの性能(測定結果)の一覧表は こちら をご覧ください。

なお、ビデオカードは HDMI や DVI、Display Port と呼ばれる端子・コードでモニターに接続します。
これら映像出力端子については 接続端子の用語集 で解説しています。

ビデオカードはモニターにコードで直接つなげるものであるため、コードが引っ張られるなどの物理的な要因で、不具合が発生しやすいパーツでもあります。
上位のビデオカードは大きくて重いので、自然に脱落や接触不良を起こすこともあります。

ビデオカードにトラブルが起こると画面が止まったり映らなくなってパソコン自体の故障となるので、扱いには注意して、異常時には接触不良を疑ってみましょう。