- 2022年11月に発売されたマウスコンピューターの14型ノートパソコン
- 第12世代 Core 搭載で高めの処理能力を持ち、14型なので持ち出しも可能
- NVMe SSD を2本搭載可能、価格も安めの過不足ない製品
こんな人にオススメ!
- 安めで標準的なパソコンが欲しい方
- 持ち出せて相応の処理性能も持つノートPCが欲しい方
- 15型じゃちょっとデカいという人
レビューは公正に、忖度なく行っております。
マウスの新スタンダードPC
マウスコンピューターの14型ノートパソコンはこれまで、携帯性重視の mouse X4 シリーズしかなかった。
そこに新たに加わったのが、14型だが標準的なモデル「mouse F4」シリーズだ。
(2022年4月に mouse B4 シリーズは F4 シリーズに改名されています)
省電力CPUを使っている mouse X4 シリーズに対し、mouse F4 は標準型のCPUを搭載し、処理能力に優れる。
また、マウスコンピューターには珍しく2色のカラーが用意された。
ベーシック(基礎的)なモデルであるため、軽量素材が使われているわけでも、ビデオカードや光学ドライブなどが備わっているわけでもない。
だが、14型で1.38kgのボディは扱いやすく、バッテリーも公称10時間駆動。
カスタマイズ性も14型ノートPCとしては高く、2本のNVMe SSD(記録装置)を搭載可能。
Core i7 と Core i5 のモデルがあるが、標準構成で Core i5-1240P 搭載機(mouse B4-i5)なら税込129,800円と、10万円台前半で買えるのも良い。(Core i7機は約15万円)
全体的に、一般向けノートPCとしてバランス良くまとめられている。
以下、本機の特徴をレビューしていきたい。
外観
デザインとモバイル性能
mouse F4(旧 mouse B4)は「シャンパンゴールド」と「オリーブブラック」の2色が用意されている。
シャンパンゴールドは光沢のある薄いセピア色で、お洒落ながらも落ち着いた雰囲気だ。
表面には梨地加工が施されており、サラサラの触感で、天板はひんやりしている。
キーボードとモニターの外周は黒く、中はセピアとブラックの渋い配色。
女性にも人気の出そうな大人びた印象だ。
オリーブブラックの方は全体が黒でまとめられている。
落ち着いた色合いのシャンパンゴールド
中も気品のあるカラーリング
サイズは横は約32cm、縦は約21.5cm、厚さは約19mm。
14型ノートPCとしては若干コンパクト。
重量は1.38kgで、昨今の14型としては標準的な重さ。(実測では1.37kg)
両手ならヒョイと持ち上げることができ、カバンなどに入れても大きな負担にはならない。
どちらかと言うと社内やホームワーク向けだが、持ち出して使うこともできる。
ACアダプタも小型軽量で、約230g。本体と合わせても約1.6kgほど。
バッテリー持続時間は公称10時間。
14型としては標準的な約52Whのバッテリーを備えており、省電力のCPUでなくても相応の駆動時間を確保している。
A4とセミB5のノートとの大きさ比較
ほぼA4サイズに近い
マウスのACアダプタも230g台に
近年、どんどん軽量化が進んでいる
インターフェイス(接続端子)は、左右両方に普通の USB と USB-C が1つずつ付いている、使い勝手に優れた配置。
HDMI端子と電源端子は右側に、SDカードリーダーとイヤホンジャックは左側にある。
右側の USB-C は高速(40Gbps)で映像出力と充電にも対応した Thunderbolt4。
左側の USB-C は USB3.1(10Gbps)だが、こちらも映像出力(USB-ALT)と充電(USB-PD)の双方に対応している。
これらは(出力65W以上の)モバイルバッテリーでの充電が可能だ。
普通のUSBも 3.0(5Gpbs)で、データ転送が遅いUSBはない。
左側面の接続端子。表面があらく見えるのは梨地加工のため
右側面の接続端子。こちらの USB-C が Thunderbolt4
通信は Wi-Fi 6(ax)と Bluetooth 5 に対応。
ただ、有線LAN端子がないため、有線でネットに繋げたい場合はUSBのLAN変換アダプタが必要になる。
これは購入時に一緒に買うことも可能だ。
モニター / カメラ / サウンド
モニターは非光沢液晶で、解像度はフルHD(1920x1080)。
台湾 Innolux 社の液晶パネルが使われている。
発色を示す sRGB カバー率は約66%、Adobe RGB は約50%とそこそこ。
輝度は 250nit と高くなく、持ち出しも可能なノートだが、日の当たる場所で使うには向いていない。
だが、視野角は全方位89度で、ほぼ180度をカバー。見る角度による画質劣化は最小限で、コントラスト比は 800:1。
リフレッシュレートは60Hzと平均的だが、応答速度が11~14msと早く、動きの激しい動画でも残像は生じない。
品質としては標準的で、高発色モニターではないが、悪い性能ではない。
高発色ではないが普通に綺麗に見える画面。左右の枠幅は4.5mmと極小
ヒンジは150度まで、かなり開く。だったら180度にすればいいのにと思う
モニターの上部にはHD画質(約92万画素)のカメラと2つのマイクが付いている。
カメラは顔認証に対応しており、見るだけで手軽にログイン可能
マスクを着けていると認証できない難点はあるが、セキュリティ面でも安心だ。
サウンドも音響システムの定番
昨今のイコライザーとしては上位のもので、ドルビー対応のヘッドホンや音響機器があれば、より高度な立体音響を楽しむこともできる。
音質はそのままでも悪くはないが、最初はイコライザーの効果がオフになっているので、調整ソフト「
サウンドに応じて自動で調整してくれる「ダイナミック」が良い印象だが、映画用やゲーム用などが用意されており、好みに変えることができる。
安めの機種にもかかわらず上位イコライザーのドルビーアトモスを備える
ゲーム設定には効果音が聴こえる方向を重視するパフォーマンスモードがある
キーボード
14型だが、キーボードには十分な広さがある。
キーピッチ(キーの間隔)は一般的な 19mm が確保されており、テンキーはないが、窮屈さは全くない。
エンターキーは細めだが、使っていて気になることはなかった。
キーは硬めで、反発も強く、タイプしているとボタンを押しているようなポチポチという感触が強めに伝わってくる。
キーストローク(キーの深さ)が 1.2mm しかなく、柔らかいキーにすると板を叩いているような衝撃が来るため、硬めにしてそれを防いでいるようだ。
ただ、やはり使い始めはキーの浅さを感じることは否めない。
カーソルキーは上下キーのサイズが半分しかない小型のものだが、横幅が広めに取られており、ノート用としては使いやすかった。
また、LED バックライトが備わっており、薄暗くてもキーの場所がわかりやすくなっている。
硬めの打鍵感のキーボード。スペースキーはやや小さめで、他のキーは広め
個々のキーサイズを優先していてエンターが細めだが、打ちにくさはない
本機には2つの動作モードがあるが、Fn + F5 で切り替えられるようになっている。
最近のマウスのノートPCには動作の切り替えをキーで行えないものがあるが、本機は簡単に切り替え可能だ。
タッチパッドは中央にあり、大きめで使いやすい。
マウスコンピューター特有のしっとりした触り心地は薄れているが、指の良く滑る、使いやすいタッチパッドだ。
押し込みの硬さもちょうど良く、ジェスチャ操作のカスタマイズ (高精度タッチパッド)にも対応している。
また、マウスの左上をポンポンと2回叩くと、パッドを手軽に ON/OFF できる。
OFF のときにはランプが付くので一目で判別可能で、機能性が高い。
このランプの部分をダブルタップすることでON/OFFできる。目立つ緑色になった
F5にはスピードメーターが付いている。Fnキーと一緒に押してモードチェンジ
パーツ性能
処理性能(CPU)
mouse F4 には CPU に を使ったモデルと、 を使ったモデルが存在する。
どちらも第12世代 Core のノートパソコン用で、「P」は標準型を意味している。
登場は2022年の初頭で、Core i7 の方が上位だが、値段は高い。
検証機は Core i5-1240P 搭載モデルなので、以下の報告は Core i5 のものであることを留意してほしい。
第12世代 Core は高性能な「Pコア」と、省電力な「Eコア」の複合構成だが、Core i7-1260P と Core i5-1240P、どちらもPコア4、Eコア8の12コア構成。
Pコアは2つの作業(スレッド)を同時に行えるので「12コア16スレッド」の CPU である。
TDP(発熱と消費電力の目安)は 28W となっているが、本機には2つの動作モードがあり、バランスモードは 28W、静音モードは 15W で動く。
やや小型の一般向けノートパソコンであるためか、フルパワーを出すパフォーマンスモードは備わっていない。
以下はバランスモードで性能測定(Cinebench R23)を行った結果と、他のノート用CPUとの比較グラフだ。
バランスモードで測定
測定中の再現(バランス)
・マルチコア性能(Cinebench R23)
Core i7-12700H:12500
Core i7-11800H:10800
Core i7-1260P:9000
Core i5-1240P:8400(本機バランス)
Core i7-1255U:8300
Core i5-11400H:8250
Ryzen 5 5625U:8050
Core i7-1165G7:5800
Core i5-1240P:5300(本機静音)
Core i5-1235U:5000
Core i5-1135G7:3850
Core i7-1165G7:3600(15W)
Core i5-10210U:3100
Core i3-1115G4:2600
Celeron N4100:950
・シングルコア性能(Cinebench R23)
Core i7-12700H:1810
Core i7-1260P:1750
Core i7-1255U:1750
Core i5-1240P:1680(本機バランス)
Core i7-11800H:1520
Core i5-1240P:5300(本機静音)
Core i7-1165G7:1500
Core i5-11400H:1480
Ryzen 5 5625U:1400
Core i5-1135G7:1350
Core i5-1235U:1340
Core i7-1165G7(15W):1300
Core i3-1115G4:1300
Core i5-10210U:1050
Celeron N4100:380
マルチコア(並行処理)のスコアは約8400。
ノートパソコンとしてはかなり高い数値で、Core i5 でこれだけ出るなら上等だ。
ちなみに Core i7-1260P だと約9000になる模様。
シングルコア(単一処理)のスコアは約1680で、こちらもさすが第12世代 Core と言える。
平均的に高めの数値のため、マルチコアが影響する動画編集や起動速度、シングルコアが影響する一般のソフトウェアやゲーム、両方影響する Office や Photoshop 等、どの分野の作業もそつなくこなせるだろう。
前述したようにバランスモードはフルパワーという訳ではなく、高負荷時に一時的に性能を上げる「ターボブースト」の投入電力が30Wに抑えられていた。(最大64W)
普段の最大投入電力が28Wなので、2Wしか違わない。つまりブーストの意味があまりない。
ただ、高電力でのブーストは高熱になり、冷却ファンが高速回転するため騒音も増す。
本機はそこまでの負荷は与えないようになっている。
それでも負荷が高い時には「シュー」という空気が漏れるような動作音がそこそこする。
では、静音モードだとどの程度の性能になるのか?
以下はその測定結果だ
静音モードで測定
測定中の再現(静音)
マルチコアのスコアは約5300、シングルコアは約1510。
これは第11世代 Core の標準モデルと同等だ。それでいて静音モードなので音はかなり小さい。
この性能でも一般的な作業は十分できるので、普段は静音モードで使うと良いだろう。
重い処理を行うときだけ Fn+F5 キーでバランスモードに切り替えよう。
動作モードを使いこなせば、本機の使い勝手はさらに上がるはずだ。
なお、動作モードの切り替えは Mouse Control Center というソフトウェアを一度起動しないと働かない。
一度起動すると、以後はパソコンの起動時に自動的に立ち上がるようになる。
購入当初は注意して欲しい。
動作モードごとの詳細を表にまとめると以下のようになる。
モード | ブースト時 動作とコア温度 |
通常時 | マルチ スコア |
シングル スコア |
高負荷時 動作音 |
バランス | 30W 85秒 70~73℃ |
28W 68~71℃ |
8400 | 1680 | やや大 (45db) |
静音 | -- | 15W 57~60℃ |
5300 | 1510 | 小さい (38db) |
グラフィック性能(GPU)
Core i7-1260P と Core i5-1240P には、インテル社自慢の
ビデオカードには及ばないが、CPU内蔵機能としては従来型を越える3D描画性能を持つ。
ただ、Core i5 だと Core i7 よりグラフィック性能は少し劣る。
以下は 3D Mark(Time Spy)で調べた、本機のグラフィック性能だ。
※ゲームパフォーマンス予測の1080pは解像度1920x1080、1440pは2560x1440。
Ultra は最高画質設定であることを示す。
グラフィックスコアは約1180。
ターボブーストを抑えているためか、標準的なスコアよりは低め。
静音モードだと約1130になるが、大差はなく、静かになるので、軽めのソフトやゲームなら静音モードで動かすのもアリだ。
人気ゲームの「エーペックス」や「フォートナイト」は 45fps(秒間45コマ)で動作する。
これだけ動けば十分に遊ぶことができる。
「ファイナルファンタジー15」のベンチマークは厳しく、軽量画質でも「重い」の評価。(スコア 2060)
ただ、動作困難というわけではない。
「モンスターハンターライズ」は意外と動き、中画質で 25~35fps、低画質なら 60~75fps。
ソフト側の対応が進んでいるのもあるのか、中画質でも平均30fpsでプレイすることができた。
「龍が如く」シリーズは中画質で25~30fps、低画質で35~45fpsとなった。
龍が如くは中画質だとギリギリ
モンハンライズは意外と中画質で遊べる
3D描画性能は高いとは言えないが、画質次第で意外と最近のゲームも行ける印象。
CPU性能は十分なので、3D描画がないゲームやソフトウェアはまったく問題ない。
もちろん Youtube 動画の視聴など、映像の表示は快適だ。
ゲームやCAD(設計)向けのパソコンではないが、一般的な用途で困ることはないだろう。
ストレージ(記録装置)とメモリ
ストレージ(データ記録装置)には標準で512GBの が使用されている。
昨今主流の小型で高速なSSDだが、本機の大きな特徴は、カスタマイズで1本追加可能、2本構成にできることだ。
これはノートPCでは珍しく、14型ノートとしてはなおさら珍しい。
NVMe SSD は安くはないので、2本にしたり、大容量のものにすると価格はかなり上がる。
それは比較的リーズナブルな本機では本末転倒な気もするが、しかし 1TB(1000GB)にするのに、512GB を 1TB に変えると18000円ぐらいするが、2本目の 512GB を足せば14000円ほどで済む。
より柔軟なカスタマイズが可能になっている。
標準の NVMe SSD は Gen3(第3世代 PCIe)の製品だが、より高速な Gen4(第4世代)の製品に変えて貰うこともできる。
以下はベンチマーク(性能測定)ソフト Crystal Disk Mark で測った、検証機に付いていた標準構成の NVMe SSD の性能だ。
標準設定での測定
NVMe SSD 設定の測定
使われていたのはウエスタンデジタル社の SN530 という製品。
読み込み 2400MB/s、書き込み 1800MB/s という性能で、第3世代(Gen3)の NVMe SSD としては書き込み速度に優れる。
ランダムアクセス(3段目)は標準的で、特に難点はない。
メモリも標準で 16GB 搭載されており、8GB が2本の構成で、2本のメモリにデータを分散して高速化するデュアルチャネルで動作している。
種類は現在の主流である で、何も問題はない。
カスタマイズで 32GB や 64GB に増量することも可能で、64GB まで積めるのはクリエイターモデル並みだ。
ただ、一般の用途では 16GB あれば十分だろう。
総評
マウスコンピューターは14型ノートをモバイル機、15型以上のノートを一般向けとして扱っていた感があるが、昨今は持ち出すには大きい15型ノートは大型機という見方になっている。
これに合わせ、14型の標準モデルを用意した、といったところだろうか。
スタンダードモデルだけあって目立つ特徴はないが、端子類は最新かつ充実しており、処理能力も14型ノートPCとしては優れている。
顔認証があり、サウンドが良く、モニターとカメラも及第点。
ストレージとメモリの増量も可能と、新しい標準機を作ろうとしている印象だ。
カラーバリエーションがあって安めに抑えているのも、新たな普及機としての意欲を感じる。
持ち運びも可能な一般向けのノートパソコンとして、過不足ないマシン。
最新ゲームや創作を考えていないなら、後悔しない製品だろう。
形式:14インチ ノートパソコン
CPU:Core i5-1240P / Core i7-1260P
グラフィックス:CPU内蔵(Iris Xe)
メモリ:16GB(DDR4-3200、8GBx2)
ストレージ:512GB NVMe SSD(Gen3)
モニター:解像度1920x1080
サウンド:ドルビーアトモス搭載
通信:Wi-Fi 6、Bluetooth 5
モバイル性能:1.38kg、バッテリー公称10時間、顔認証
その他:カラー2色、2段階の動作モード、Thunderbolt4端子、NVMe SSDを1つ増設可
価格:税込129,800円
(Core i7 モデルは税込149,800円)
※詳細はマウスコンピューター公式サイトをご覧下さい。
※色はシャンパンゴールド(セピア)とオリーブブラック(黒)の2種類
※仕様・価格は時期により変更の可能性があります。
執筆:2022年12月20日